大学受験に失敗した晴斗(犬飼直紀)は、浪人生活を送りながら鬱々とした日々を過ごしていた。初めての挫折に自信をなくし、時間だけが過ぎていったある日、映画館をオープンさせた姉のまどか(松﨑映子)に会いに行くと、半ば強引に手伝いをさせられることに…。
そこで出会った映写技師の圭吾(伊藤悌智)の影響で映写機に興味を持ち始める晴斗。人生につまずいてしまった、と感じていた晴斗が、圭吾や子供の頃に世話になった茂(植吉)や加代(酒井麻吏)たちとの関わりの中で、ある光を見つけようとしていた――
大学受験に失敗した晴斗(犬飼直紀)は、浪人生活を送りながら鬱々とした日々を過ごしていた。初めての挫折に自信をなくし、時間だけが過ぎていったある日、映画館をオープンさせた姉のまどか(松﨑映子)に会いに行くと、半ば強引に手伝いをさせられることに…。
そこで出会った映写技師の圭吾(伊藤悌智)の影響で映写機に興味を持ち始める晴斗。人生につまずいてしまった、と感じていた晴斗が、圭吾や子供の頃に世話になった茂(植吉)や加代(酒井麻吏)たちとの関わりの中で、ある光を見つけようとしていた――
何かに行き詰まり、挫折して立ち直るすべが見つけられない。その状況を私たちはどう乗り越えていくだろう。
『光の指す方へ』は人生が止まってしまったように感じている浪人生の晴斗が、年の離れた姉のオープンさせた映画館で映写技師の圭吾や昔馴染みの常連客たちに出会うことで前を向く物語。晴斗の背中をそっと押すのはコミュニティの場としての映画館であり、映写機から指すまっすぐな光、一瞬のフィルムの切り替えだ。
監督は脚本家としても活躍し、高山市合併10年記念映画『きみとみる風景』(15)に続く長編2作目となる今西祐子。実在する映画館シネマネコを舞台に不器用な主人公と、それをとりまく人々の優しい存在を繊細に掬いあげた。
主演は『14の夜』(16)で主演デビューし、今後ますますの活躍が期待される犬飼直紀。主題歌「ひかり」は3rdシングル「花になれ」で話題を集めたシンガーソングライター指田フミヤの書き下ろし。
劇中には老舗映写会社「鈴木映画」で長年活躍する映写機が登場し、篠原哲雄監督作品「洗濯機は俺にまかせろ」(ディレクターズ・バージョン)の35mmフィルムが象徴的に投影されている。
フィルム映写機2台を手動で切り替えて上映する際に必要となる目印。切り替えのタイミング約7秒の間に2回、スクリーン右上に映し出される。
映画看板がある街、東京都青梅。映画の街として多くの人で賑わい、3館もの映画館が建ち並んだ歴史がある。この街に約50年ぶりに復活した映画館がシネマネコ。
東京唯一の木造建築×最新設備の映画館として生まれ変わった建物は、昭和初期に建設され、平成28年には国の有形文化財に登録された青梅の織物文化、物作りの香りが残る歴史的建造物である。
新しいコミュニティの場を作り、青梅の人々だけではなく、この街を訪れた人々にも映画というエンターテイメントを通して感動や楽しさを提供し、日本に笑顔を届けたいという願いが映画館を誕生させた。地域の人々にとどまらず、この場所を訪れる人々に愛され、映画館の枠に捕らわれない可能性が広がる。今後も目が離せない映画館だ。
WEBサイト映写技師として2003年に芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した鈴木文夫氏が前代表を務め、現在もフィルム上映のことならば真っ先に名前が挙がる有限会社鈴木映画。
35mm/16mm/8mmフィルム映写機はもちろん、デジタルシネマプロジェクターDCPをはじめ、DLP/LCDプロジェクター、各種音響機材やスクリーンを取り揃え、国内の多くの映画祭、完成披露試写会、更には学校の映画鑑賞会や野外上映会など様々な映画イベントに対応。その経験と技術でクオリティの高い映写を実現し映画文化を陰で支えている。
本作では映写指導や機材提供で全面協力。映写機材が並ぶ同社倉庫も本作の重要なロケ地として登場している。
WEBサイト※クリックでプロフィールを表示
2000年12月9日生まれ。幼少期を岐阜県で過ごし、現在は東京都在住。
2013年からミュージカルの舞台で経験を積み、「未来への贈り物」(14)、「冒険者たち」(14)、「くっくまミュージカル」(16)などに出演。2015年NHK「私は父が嫌いです」でドラマデビュー。2016年公開の映画『14の夜』(足立紳監督)ではオーディションを勝ち抜き、映画初出演ながら主役に抜擢。その後は映画『笑う招き猫』(17)、『ちはやふる-結び-』(18)、NHK 大河ドラマ「西郷どん」(18)、「麒麟がくる」(20)、「青天を衝け」(21)、NHKよるドラ「ここは今から倫理です。」(21)、ラジオドラマ「オートリバース」(20)、「屋上の侵入者」(21)、舞台「アルプススタンドのはしの方」(21)などに出演。今後の活躍が注目される若手俳優の一人。
1983年3月24日生まれ。栃木県出身。
益子焼陶芸家の父の影響で幼い頃から芸術に親しみ大学では演劇を専攻。
卒業後は自身の演劇ユニットを立ち上げ精力的に活動を開始。数多くの舞台で培った表現力と演技力には定評がある。今作では繊細な心の揺れを表現する大人の女性を好演。近年の映画出演では、映画『犬部!』(21/篠原哲雄監督)がある。
Comment
家族、仕事、プライベート…アンバランスに揺れ動き、もがく経験は誰もが身に憶えのあることなのではないでしょうか。
私も20代、30代の移りゆく環境の中でもがき続けてきた女性の1人です。
この作品の“まどか”も、静かにもがいています。強くみえて脆かったり、理想と現実の間でモヤモヤしたり…そんなまどかに私自身とても共感しました。
今西監督の作品には、大人になると忘れてしまいがちな、思春期とか、昔の恋愛とか、傷ついたことに蓋をしていたこととか、そんなところをつつかれます。
脚本では何気ない会話も、言葉にしてみると感情が動かされて、その感情をどこまで表現していくのか、監督と相談しながらの撮影になりました。
あたたかく、やわらかく、ちょっとせつなく…そんな、監督の人柄を感じる世界観が漂う現場。その中で、自然体で活き活きと生きている共演者の方々はとても頼もしく、肩の力をぬいて役を演じられたことが、幸せで、有り難かったです。
弟の晴斗役を演じられた犬飼直紀さんとの距離感は作品を作っていく中で大切にしたポイントの一つです。シーンを追うごとに晴斗が成長し、姉弟の絆が深まっていったのを感じ取ることができたのは役者冥利につきるできごとでした。気持ちを表現するのがあまり得意じゃない姉弟は、お互い繊細に心を寄せ合う…
その不器用さと愛おしさに一緒に寄り添って観ていただけたら嬉しいです。
1986年6月9日生まれ。大阪府出身。
映画、テレビ、CMを中心に活動。甘いマスクの都会的な二枚目から、気の良い大阪の兄ちゃん、OLに変装した潜入捜査官、果ては人間以外のキャラクターまで様々な役を演じてきた。自身の特技でもある木工やDIYはプロ級の腕前。車やバイクの知識も豊富で企業との連載企画やアウトドアギアのデザイン提供なども行う。2020年の「アートにエールを!東京プロジェクト」では「リモートオーディション(仮)」という作品を発表。監督・脚本を務め、マルチな才能を発揮している。近年の映画出演では、『DIVOC-12』「流民」(21/志自岐希生監督)、ドラマでは「八月は夜のバッティングセンターで。」(21)などがある。
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完成した作品は脚本の言葉だけでなく、映写機をはじめとする様々なリアルな音や視覚で人々の心情が表現され、それぞれの登場人物の分岐点が描かれています。
この作品で私は映写技師を演じ、フィルム映画の映写機に初めて触れることになりました。二つの映写機にフィルムをセットし、切り替えながら1本の映画作品を上映する。その切り替えるタイミングでスクリーンの右上に「チェンジマーク」が出る。その映写機の切り替えがこの作品では人の気持ちの切り替え、分岐点、または新たなスタートにも見えるのです。実際、撮影現場では映写機を動かすと機械の匂いや熱も伝わってきます。
画面からは伝わりきれないかもしれませんが、その辺も想像して観て頂けたらより楽しめるのではないかと思います。
また映写技師としての手の動きや映写機材の使い方を撮影にあたって教えて頂きましたが、そこに圭吾としてセリフをのせていくという作業は難しくもやりがいのあるものでした。
何てことない日常と人々の気持ちの一片が映画館と、フィルム映写機を通して温かく描かれています。
人生で必ず行き当たる分岐点、終わりがあり、そして始まる。そこは常に一筋の光で照らされています。
1998年8月4日生まれ。大阪府出身
ほのぼのとした笑顔のなかに芯の強さを持った女優。小柄ながらも剣道は2段という腕前。パン屋巡りが趣味でパンコンシェルジュ検定3級を取得。持ち前の明るさと表現力でCMやテレビ、舞台への出演を重ねている。
1981年6月16日生まれ。神奈川県出身。
劇団PU-PU-JUICEの旗揚げメンバーとして第1回公演「JUICE」(06)から出演。以後、ほぼ全公演に携わり、バラエティ豊かな役を演じてきた。精力的に様々な劇団の舞台にも参加し「Angry12」(21)での陪審員3号役では人生が滲み出た演技に、高い評価を得た。また、その個性と演技力で映像分野へも活躍の場を広げ、ドラマ「日曜劇場 JIN-仁-完結編」(11)や映画『ミッドナイトスワン』(20/内田英治監督)、『はぐれアイドル 地獄変』(20/東海林毅監督)など幅広く活躍中。
1967年2月3日生まれ。東京都出身。
20代前半から女優活動をスタートさせ、テレビや商業演劇を中心に活躍。近年は小劇場での舞台やCM、映画の分野にも活動の場を広げ、園子温監督の映画『エッシャー通りの赤いポスト』(20)などに出演。日本舞踊は長年鍛錬を重ね、和ものの所作や着物の着こなしにも定評がある。また、ワインエキスパートの資格を取得するなど、精力的に活動している。
1955年2月1日生まれ。東京都出身。
文学座や演劇集団 円など新劇の世界で確かな演技力を身につけ、穏やかな婦人から近所のうわさ好きの主婦、商店街の名物店主など多彩な役柄をリアルな存在感で演じてきたバイプレイヤー。映画、テレビをはじめ、ナレーションや朗読など声の仕事にも取り組み、活動の場は多岐にわたる。近年では佐々春佳監督の『あすみ』(21/早稲田大学映像制作実習)への出演など若いクリエイターともタッグを組み、自主映画作品などにも精力的に参加している。
1948年9月1日生まれ。岡山県出身。
元警視庁警察官であり、現役の造園業親方という異色の経歴の持ち主。現在、植木職人として庭園プロデュースなどを手掛ける一方、俳優として舞台、映画、テレビ、CM等に出演。独特の存在感と確かな演技力で様々な役を演じてきた。温泉ドラゴン第14回公演「五稜郭残党伝」(19)での骨太な演技は記憶に新しい。 また、Ayoub Qanir監督の『Darkness of Otherwhere 闇の奥』(19)やKhruangbin ミュージックビデオ「So We Won’t Forget」(20)など海外作品への出演も続いている。
1974年、東京都出身。
2000年より映像制作を始める。
主な作品として、『きみとみる風景』(15/監督・脚本)、「こんな未来は聞いてない!!」(18/FOD/脚本)、「新米姉妹のふたりごはん」(19/テレビ東京/脚本)、「スナックキズツキ」(21/テレビ東京/脚本)、「星から来たあなた」(22/Amazon prime/脚本)などがある。
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ここ数年続いている制限の多い暮らしの中で、自覚していなくても不安やストレスが澱のように溜まっていき、息が詰まりそうに感じている人は多いのではないでしょうか。
そんな時、日常で起きるほんのささいなことが、気持ちを楽にしてくれる時があります。
例えば、不安に押しつぶされそうになった夜、朝が来てカーテンの隙間から日差しを感じた時だったり、誰とも話をしなかった翌日に、ふいに心を許せる人と何気ないコトバを交わした時だったり。
もしかしたら、その日の夜にはまた不安が押し寄せるかもしれません。
でも、朝の光を感じた午前中は、昨夜よりも気持ちが楽に過ごすことができたり、くだらない話をして笑い合っただけで、心が安らいでいくことを実感できる。
それがかけがえのない日々であり、人生なのだと思うのです。
でもそれは、忘れてしまいそうなくらいに小さな出来事で、私はそんな瞬間を忘れたくないと思い、この映画をつくりました。
主人公の晴斗が抱えていることは、他人から見れば特別大きなことではなく、誰もが経験する小さな挫折にすぎないかもしれません。
でも私は、器用にそれを乗り越えることができる人よりも、小さなことにもがき、気持ちが晴れずにいる人に、魅力を感じるのです。
思い詰めると周りが見えなくなる。そんなひとに、逃げ道、回り道は大切だという思いを、この作品に込めました。
1976年5月5日生まれ。三重県出身。
ドラマのエキストラから映像業界に入り俳優活動を続け、マネージャーや付き人などのスタッフ業務にも携わる。2012年に独立し芸能プロダクション株式会社アイトゥーオフィスを設立。これまでの経験を活かし、同じ志を持つ俳優のマネージメントやキャスティング業務に邁進しつつ、自身も俳優、映写技師など多岐にわたる活動をおこなってきた。今作は長編映画プロデュース第1作となる。主な出演作に映画『山桜』(08)、『シン・ゴジラ』(16)、『シン・ウルトラマン』(22)、ドラマ「プライド」(03)、「ウルトラマンマックス」(05)、舞台「天保十二年のシェイクスピア」(02)など。今西祐子監督とは短編ドラマ「my life」(21)のプロデュースに続くタッグとなる。
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私が独立した2012年といえば東北復興の真っ只中。日本が少しでも前に進もうと再び歩みを始めた時代。私もプロダクションの経営者として一歩を踏み出しました。独立当初、プロダクション経営の先輩から「まずは10年頑張れ。10年って長くて短く、いろんな事があるけど必ず良い事あるから。」というアドバイスをいただき、それがずっと自分の中にありました。その言葉通り良い事もそうでない事もいろいろありつつ、節目となる10年目の年には、何かを形に残したいという想いが。
しかし、私が意識していた“10年”を目前に世の中はコロナ禍へ突入。毎日のように暗いニュースが流れ、様々な情報に惑わされていました。多くの人と同じように、焦りや不安を抱えていましたが、私が落ち込んでいては所属の俳優をもっと不安にさせてしまうと、持ち前のポジティブ精神で気持ちを奮い立たせて日々を過ごしました。
俯いてばかりはいられない。少しずつでも前に進もう。何とかして俳優が活動する場を作らねば。そうした中で知ったのが文化庁のAFF事業でした。手探りではあるもののどうにか動き始め、大作映画のような規模ではなく、人数が制限されながらも、それをチームワークとフットワークの良さに変換させた体制を組むことができました。アツい気持ちを持った俳優達と、各専門分野の心強いスタッフ陣。同じくコロナの影響を大きく受けていた映画業界の2社、映画館シネマネコと有限会社鈴木映画の全面協力のもと、本作『光の指す方へ』の製作は開始されたのです。紆余曲折ありながら撮影し、編集を重ね、私の中で一つの目標にしていた設立10年という節目の年に一つの映画作品を公開できる事になりました。
何だか壮大な事を言うようですが、人類の歴史から見ればコロナ禍はほんの一瞬に過ぎないのかもしれません。その一瞬の同じ時代を乗り切ろうと生きる私たちのご縁が繋がり、この作品に目を向けていただける事は本当に奇跡のようです。もしもトンネルに迷いこんだら、出口に向かって少しずつ進めばきっと、明るい未来が待っている。人生の避難訓練のように感じていただけたら嬉しいです。
関わってくださった全ての方々と、この作品がこれからも光の指す方へ向けて一歩ずつ歩みを進めることができますように。
1986年8月18日生まれ。東京都出身。
2010年WARNER MUSIC JAPAN主催「VOICE POWER AUDITION」で約1万人の応募者の中からグランプリを受賞後、メジャーデビュー。
3rdシングル「花になれ」で話題を集め、自身の音楽活動以外にもアーティストへの楽曲提供やプロデュースなど幅広く行っている。
今回、映画からインスパイアされ楽曲を制作。更に自らがボーカルを務め、映画のエンディングを心地よい余韻で彩っている。
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今回「ひかり」という楽曲を書き下ろさせていただきました。
コロナ禍になってから楽曲提供などはさせていただいていましたが、 自身で唄う楽曲はなかなか生まれず自分でも歯痒い思いをしていた時に、 この映画の主題歌のお話をいただきました。 今作「ひかり」はこの『光の指す方へ』という作品がきっかけになり、 もう一度自分自身と見つめ合う事で生まれた楽曲でもあります。 迷いながらも自分の道を切り開いていく主人公の姿を重ね合わせながら 自分を含め、現代を生きる人々の切なさと希望を歌詞と楽曲で表現しました。
『光の指す方へ』の映画版とリリース版ではアレンジが少し違っていて 映画の方では世界観に合うよう音数を少なくしたり歌詞をほんの少し変えてみたりしています。
そんなところも映画と合わせて楽しんでいただけたら嬉しいです。
また自分自身メジャーデビューしてからいつの間にか10年が経過していた事もあり10年音楽の世界にいる自分を振り返りながら僕の中でもすごく特別な楽曲になりました。
※順不同・敬称略。
フィルムに透ける光の美しさは眩ゆい。現代の人間の進路や人との交いに迷った心理がその光によって透けていく感じがゆるりと描かれている。
この「ゆるり」が今西祐子なんだなと思う。
映写機が放つ光は光源から遠ざかるにつれ拡大し、スクリーンを輝かせる。
本作はその光の仕組みに似て、映画館が登場人物の機微を照らし、物語を静かに広げる。それはフィルムの透過光のように優しくこちらの心に映る。
映画館で働いていた頃、おはようございますと階段を登ると 映写室の暗闇の中、朝の上映準備で、機械から伸びる光の先を見つめている先輩がいた。
その姿はとても凛々しく、真剣で、 映画の仕事をする人の姿勢と愛情に元気をもらえたことを思い出しました。
浪人生活を送る晴斗の憂鬱は映画館のつながりの中で癒えていく。 こんな場所があったらいいなって多くの人が思うはず。
丁寧に描写されたフィルム映写機の音、手ざわり、光が、 純粋な喜びと前向きな気持ちを与えてくれます。
“場所”に心が救われる、ということがある。
映画館というのは孤独な人に寄り添ってくれる場所なのだということを改めて信じさせてくれる映画です。
「失敗したらどうするの?」
「あやまる。そして次は失敗しないようにする」
という台詞にみられるように、フィルムの切替映写と、人が生きる在り方とを巧く結び付けた作品だと思います。
光の指す方へ、、タイトルからして想像が膨らむ。 「知らない映画との出会いはワクワクするんだよ」にナットク!
晴斗とまどかが歩く夜道も、劇中映画で木崎と吉田が彷徨う土手も、誰かがそばにいる。そこに「光」があるのかな。
私も人生に立ち止まった時、映画に頼った。たくさん寄り道をしたし、今もしている気がする。その中で本作の今西監督とも出会っていた。
主人公のような人がこの作品に出会った時に、きっと光が指す、と強く思った。
まず冒頭での主人公・晴斗の瑞々しさが眩しく目を奪われます。映写機の心地良い音と共に動き始める心の煌めきは、大人こそ忘れたくない瞬間なのかもしれません。
ロケ地のシネマネコさんでの上映に足を運ぶのも乙ですね♪
設計した映画館をこのような形で映画の舞台にしていただき、非常にうれしく思います。
椅子のエピソードが引用されていたり、登場人物の心理描写も空間を最大限に活かされていて、建築家としてこの上ない喜びです。
私の監督デビュー作「14の夜」で、うだつの上がらない中学生を演じてくれた犬飼君が、今度は同じようにうだつの上がらない浪人生を演じていた。 いつも何かに苛立ち、迷い、踏み出せずにいる人の目つきが彼は抜群によく似合う。 (実物の彼はぜんぜん違います。多分!)
つまり作品の中で、彼は生活者になれている。 大した力量だと思う。 発見したのはこの私だと密かに自慢したい。
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フィルム上映に映写機を二台使うことがあるのをご存じでしたでしょうか?フィルム上映に慣れ親しんだ世代の方にとっては常識なのかもしれませんが、実は僕は脚本を読んで晴斗と同じタイミングで初めて知りました。2時間程の映画の場合でもフィルムは5~10巻になり、フィルムが終わりそうになると映写技師が次のフィルムをセットした二台目の映写機に切り替え、それを繰り返して物語を繋げていくそうです。フィルム映画の右上に出る丸いマークは、この切り替えのタイミングを示すものだったのですね。
晴斗が映写技師の圭吾に切り替えを教えてもらうシーンは、実際に本物の映写機を使わせてもらっての撮影だったのでとても印象に残っています。フィルムが走行していく音は予想以上に大きく、大声でないと会話ができませんでした。また映写機から出る光は柔らかく、まっすぐで、どこか温かみがありました。
晴斗は大学受験に失敗しており、学生でも社会人でもない人生の狭間で迷子になっています。そんな晴斗が、映写機の切り替えで物語を繋げる練習をしたり、姉のまどかと支え合ったり、映画館で出会う人たちと関わったりする中で成長していく様をご覧頂けたら嬉しいです。また映画館は実際に青梅にあるシネマネコさんを使わせて頂いたのですが、スタイリッシュでありながら温かく落ち着いた雰囲気がこの作品とマッチしていてとても素敵なのでぜひご注目ください!